10/07/30 配信分

HIV患者は網膜内部に障害を受けることにより視野障害が生じる

Patients With HIV May Suffer Damage to Inner Retinal Leading to Loss of Visual Sensitivity: Presented at WOC

By Karen Dente

この研究は6月8日に世界眼科会議World Ophthalmology Congress (WOC)で発表された。HIV患者では、感染早期から網膜内部が障害をうけることにより構造上の以上が生じ、結果的に視野障害が生じると考えられている。この研究では、HIV患者における網膜神経線維層の厚さと視野機能の関係について評価した。

HIV患者は感染性網膜炎がなくても視力低下を呈する。最近の研究では、網膜炎のないHIV患者においてレーザー眼底検査、旋光分析、光干渉断層撮影(OCT)などを用いて網膜細胞線維層の厚さが調べられている。しかし、これらの解剖学的な異常と視覚感度の関係についての情報は限られている。

ブラジル、サンパウロにあるサンパウロ大学眼科のTiago Arantes医師とその同僚は、視力検査正常で感染性網膜炎の既往のない51人のHIV患者群と22人のコントロール群を対象とした。光干渉断層撮影(OCT)を用いて網膜神経線維層の厚さを測定し、ハンフリー視野計を用いて静的視野を測定した。網膜神経線維層の厚さは時計方向に12区域に分割し、視野感度は21の視野帯に分割して評価した。統計解析は、直線回帰分析と二次回帰分析を用いて両者の関係を解析した。

ある局所の網膜神経線維層の厚さとある局所のpattern deviation (PD)値(ハンフリー視野計で測定される視野感度の値)が関係していることが明らかとなった。特に、鼻側の網膜神経線維層の厚さと耳側の視野帯、上側の網膜神経線維層の厚さと下側の視野帯が強く関係していた。HIV患者における網膜神経線維層の厚さと視野感度の低下の関係は、位置関係と障害の強さが重要であることが明らかとなった。

「我々の研究により、感染早期から網膜内部に障害を受けることによって構造上の異常が生じ、結果的に視野障害が生じるという仮説が裏付けられた。」とAtrantes医師はまとめた。

[演題名:網膜炎のないHIV患者における網膜神経線維層の厚さと視野機能の関係 ポスター206]

エシタロプラムはHIV患者の全般性不安障害に効果がある(APAでの報告)

Escitalopram Effective Among Patients With HIV, Generalised Anxiety Disorder: Presented at APA

ニューオリンズ、2010年5月25日

全般性不安障害をもつHIV患者は、HIV治療において、有害な副作用なく、精神的な苦痛から逃れることが可能である。

2010年のAnnual Meeting of the American Psychiatric Association(APA)にて報告された。

研究者らは、ハミルトンうつ病評価尺度でスコア減少について、不安障害の面で改善度合いについて、トレイルメイキングテストでのスコア減少について、エシタロプラムによる治療で認知心理学的に副作用なくどのような効果があるかについて、検討した。

「CD4陽性細胞数、患者のウイルス量についての悪影響は認められなかった。」Hanmohandeep Sohi博士(Duke大学、North Carolina)は述べた。彼は、7月からルイジアナ州立大学で精神医学のレジデントとなる予定である。

「このエビデンスは、エシタロプラムがHIV患者における全般性不安障害の治療に重要な役割を果たすことを示している。」Sohi博士は5月24日のポスターセッションで述べた。「HIVにおけるエシタロプラムの効果は、全人口に関して観察されるものと非常に近い。」とも述べている。

6週間の非盲検試験において、Sohi博士らは、抗レトロウイルス薬による治療中の、臨床的に安定している患者20名を集めた。平均年齢は44.6歳で、13名が女性であった。患者らは、エシタロプラムを10mg/dayから開始し、問題がなければ、20mg/dayへ増量された。平均許容投与濃度は、14.9mg/dayであった。

この研究の参加者の、平均ハミルトンうつ病評価尺度のベースラインのスコアは21.23点で、中程度の不安症であった。ベースラインから治療後の平均スコアは、顕著に改善し、17.62点まで減少した(P<0.01)。この患者らにおいて、the Clinicians Global Indexでも85%が効果ありという判定になった。

最も多かった副作用は吐気(3患者)、めまい(3患者)、下痢(3患者)で、続いて、口渇感(2患者)であった。

「抗ウイルス治療を中止せざるを得ないようなエシタロプラムの臨床的な副作用は見られなかった。」Sohi博士は述べた。彼は、他に、研究終了時に、開始時と比べて患者の体重減少も見られなかったと述べた。

この研究の資金はForest Research Instituteにより寄付された。

[Presentation title: An Open-Label, Rater Blinded 6-Week Pilot Trial of Escitalopram for Generalized Anxiety Disorder Among Patients With HIV. Abstract NR1-20]

多剤併用抗ウイルス治療とヘテロセクシュアルにおけるHIV-1の伝播

Combined antiretroviral treatment and heterosexual transmission of HIV-1: cross sectional and prospective cohort study.

BMJ. 2010 May 14;340:c2205. doi: 10.1136/bmj.c2205.

【目的】抗レトロウイルス療法を受けているヘテロセクシュアルの患者におけるHIVの伝播のリスクを評価する。

【対象】片方がHIVに感染している、安定した関係のヘテロセクシュアルのカップルで、非感染側が性的な関係を唯一のリスク因子として報告する。

【結果】登録時において、HIVに感染している側のパートナーが抗ウイルス薬を服用していなかった476組のカップルのうち、HIV抗体が陽性となった非感染側のパートナーは、9.2%(44名)であった。一方感染パートナーが多剤併用による抗ウイルス療法を受けている149組のカップルで、非感染パートナーで新たな感染は無かった(P<0.001)。

 どちらか一方のみがHIV陽性であったカップルにおいて、感染している側が抗ウイルス療法を受けていなかった341組で総計11000回のコンドーム無しの性交があり、その結果50件の妊娠が成立し、感染していなかった側の5名がHIV抗体陽性になっていた(プロテクト無しの性交の相対リスク0.0004、95%信頼区間 0.0001から0.001);これらのカップルのうち294組は通常はコンドームを使用しており、総計42000回の性交のうち、136回コンドームの不備によってリスクを伴う曝露機会があり、1名がHIV抗体陽性となった。コンドームの使用に関する相対リスクは0.07(0.01から0.58)であった。一方、感染している側のパートナーは抗ウイルス療法を受けている144組のカップルで、総計7000件以上の感染リスクを伴う行動があり、47件妊娠が成立し、HIV抗体が陽性となった非感染側のパートナーは居なかった(95%信頼区間0から0.0005)。

【結論】効果的な抗ウイルス療法を受けている場合、ヘテロセクシュアルな患者におけるHIV-1の感染性は低かった。防御無しの性交の拒絶と、プロトコルに一致した抗ウイルス療法は、HIV伝播における補助的な手段であった。

HIV患者において、ダルナビル/リトナビルへの変更で、重度のビタミンD欠乏症が回避できる

Switching to Darunavir/Ritonavir Reverses Severe Vitamin D Deficiency in HIV Patients: Presented at BHIVA

イギリス、マンチェスター。2010年4月26日。ビタミンD欠乏はHIV患者の健康に有害である。BHIVAとBASHHの合同カンファレンスにおいて、4月23日に発表された研究によれば、エファビレンツ(ストックリン)からダルナビル/リトナビル(DRV/r)への変更で、ビタミンD値が上昇するという。

Julie Fox博士(Guy's and St. Thomas' Hospital、イギリス、ロンドン)とその同僚は、ongoing MONETのデータを用い、ダルナビル/リトナビル800mg/100mgとダルナビル/リトナビルに2剤の核酸系逆転写阻害剤の組み合わせでの効果・安全性・認容性について比較した。

250人のもともとの患者のうち、221人がビタミンD値について測定されていた。これらの患者にちて、60週から90週にわたり、前向きにデータを集めた。

特に冬期間において、ビタミンDが低値になる傾向があり、黒人であることも関連しているようであった。エファビレンツ(ストックリン)(P=0.02)の使用、そして、ジドブジン(レトロビル)(P=0.01)の使用もビタミンD欠乏の大きなリスクであった。

スクリーニングにおいて、78%の患者がビタミンD不足であり、20%は重度の欠乏であった。

ビタミンD値について、MONETでのデータを2群に分けたとき、両群に差はなかった。しかし、ビタミンD欠乏患者の割合は、スクリーニング時と96週目で大きく変化した。

特に著名にビタミンD値が上昇したのは、他のレジメンに変更した群と比し、エファビレンツを中止した群(n=32,P=0.007)、ジドブジンを中止した群(N=40,P=0.008)、もしくは両者を中止した群(N=16)であった。

2年間のDRV/r単剤、もしくは2剤のNRTIとの組み合わせの治療で、ビタミンD値は上昇した。もっとも著名に増加したのは、エファビレンツもしくはジドブジンから変更した群で、このことから、エファビレンツ・ジドブジンがビタミンD欠乏の重要なリスクファクターであることが明らかになった。

「この研究の重要な点は、ビタミンDによって異なる抗レトロウイルス薬を決定する必要があるということである。HIV患者において、ビタミンD欠乏は臨床的関連があるといえる。」と結論付けた。

この研究結果は、Janssen-Cilag Internationalに投稿された。

[Presentation title: Reversal of Severe Vitamin D Deficiency After Switch From Efavirenz to Darunavir/Ritonavir in the MONET trial. Abstract P36]

HAARTによるウィルス量の減少は、高用量HBVワクチンへの反応性を改善する

HAART-Mediated Virological Suppression Improves Response to High-Dose HBV Vaccine: Presented at BHIVA

Evelyn Harveyの報告 2010年4月26日、イギリス、マンチェスター

「HIV陽性患者における高用量B型肝炎ウィルス(HBV)ワクチンの使用は、標準用量のHBVワクチンで反応が得られなかった場合に使用されるべきである」と、ある研究グループはBritish HIV Association (BHIVA) と British Association for Sexual Health and HIV (BASHH)の第二回合同学会で発表した。しかし、高用量ワクチンへの反応性は強力な抗レトロウイルス療法(HAART)によるウイルスの抑制によって改善するため、HIV陽性の患者において第一選択となり得る。

イギリス北部マンチェスター病院、Joanne Baxter博士と同僚は、2つのワクチンの効能を比較した;HIV感染者でHBVコア抗体が陰性、さらにHBV予防接種を受けていない患者を対象に無作為に割り付け、高用量(40μg)か標準用量(20μg)のHBVワクチンを接種した。HBs抗体テストは、3回目のワクチン投与の3ヵ月後に実行された。

途中報告の結果、標準量のワクチンを受けた群33名中18.1%でHBs抗体が100IU/Lとなり、有効であった。一方、高用量のワクチンを受けた群43名中、抗体が上昇していたのは46.5%であった。研究者たちは、さらに予防接種時のCD4陽性細胞数とウイルス量の状況に応じ、各々のワクチンの効果を再検討した。CD4陽性細胞数が200以上の場合、200未満の場合と比べてより良い感染防御抗体反応を示した。予防接種時のウイルス量は、<40から>100万 HIV RNA/mLの間で分布していたが、ウイルス量が40コピー未満の34名中、44.1%でHBVs抗体の上昇(>100IU/L)を達成した。回帰分析によりCD4陽性細胞数とウイルス量を調整すると、40μgワクチンの有効性を示すオッズ比は2.77であった。

[演題:An Open-Label Randomised Study to Compare the Efficacy of Engerix B 20 Microgram Vaccine With HBVaxPro (40 Microgram/mL) Vaccine in HIV-Infected Patients.要約P67]

ウイルス量とCD4細胞数の増加はセカンドラインのHIV治療の失敗に関連する。

Increasing Viral Load and CD4 Cell Count Affect Virological Failure of Second-Line HIV Treatment Regimens: Presented at BHIVA

イギリス、マンチェスター。2010年4月26日。セカンドラインのHIV治療開始時のウイルス量とCD4細胞数は治療失敗の可能性を示唆する。第二回BHIVA、BASHHの合同カンファレンスで報告された。

セカンドラインのHIV治療では、ある程度のレベルで失敗することがいまだにみられる。演者らは、セカンドライン治療におけるウイルス学的な失敗例について、NRTIやそのほかのパラメーター(耐性化した概要なども含め)の効果を調べ、4月22日に発表した。

David Asboe博士(Chelsea and Westminster Hospital、ロンドン、イギリス)がこの解析を主導した。早期のウイルス量と感染経路は治療成功に影響するようだが、効果のある薬剤やgenotypic sensitivity score(GSS)は関連なかった。

患者は、the UK Collaborative Cohort(CHIC)とthe UK Resistance Database Cohortから、初回のNNRTI中心の抗ウイルス治療が失敗し、1999年から2008年の間にリトナビル併用によるブースト効果ありのPIのレジメンに変えられた患者であった。403名の患者が今回の解析に一致した。ウイルス学的失敗は、初回、もしくは2回目の治療開始から4カ月目時点で、ウイルス量が200copies HIV RNA/ml以上、と定義した。

「このウイルス学的失敗の閾値は高めであるが、われわれは解析に、200以下のウイルス量は検出が難しかったような早期のデータも含めているためである。」とAsboe博士はコメントしている。

現在のガイドラインに従うと、初期治療でのウイルス学的失敗の平均は治療開始後9.4カ月後で、PIとリトナビル合剤(カレトラのことだと思うんですが)の単剤治療(17.1%)、もしくはそこに1種類の追加(28.0%)、2種類(54.8%)の新規NRTIを追加したものであった。

Kaplan-Meier解析でセカンドラインでウイルス学的失敗に陥った症例を解析したところ、ウイルス学的に治療失敗となった患者全体の55%であり、27.1%は治療開始1年以内に失敗となっていた。

セカンドラインでのウイルス学的失敗が顕著に増加するのは、初回治療時のウイルス量が高い場合に見られている(ウイルス量が1ケタ増加するごとに危険率は1.23ずつ増加、P=0.01)。セカンドラインの抗ウイルス治療開始時のCD4細胞数も成功するか、失敗するかの重要な要素となる(細胞数が50あがるごとに、危険率は0.89増加、P=0.0001)。異性間感染でHIV感染が成立した患者も、ウイルス学的失敗のリスクが特に高い。

セカンドラインでの失敗の危険性について、初期治療後の新規NRTIの追加数は関連がなかった。治療耐性がみられた216名の患者において、GSSとセカンドラインの失敗率、indicating limite、交差耐性がないことに関連はなかった。

「新規NRTIの基準となる投与種類数が、レジメンの中でそれらの効果があるかについても含めて、セカンドラインのウイルス学的失敗に関連するという根拠は得られなかった。」Asboe博士は結論付けた。

これらの結果は、PIとリトナビルの合剤を単独で治療に使用した場合の有効性を反映しているようだ。また、これは、新規薬剤の開始時には、患者の高いアドヒアランスが効果に関連していると考えられた。

[Presentation title: Outcomes of Second-Line Ritonavir-Boosted Protease Inhibitor (PI/r)-Based ART After Failure of a First-Line Nonnucleoside Reverse Transcriptase Inhibitor (NNRTI)-Based ART. Abstract O8]

Emtricitabine/Tenofovir-Based Combination Course More Tolerable for Patients Requiring HIV Postexposure Prophylaxis: Presented at BHIVA

By Evelyn Harvey MANCHESTER, United Kingdom April 24, 2010

新たなHIV暴露後予防薬の組み合わせであるツルバダ+カレトラ(TK)はこれまでの標準レジメンであるAZT+3TC+カレトラ(CK)より認容性で優れていることが BHIVA(the British HIV Association) とBASHH (the British Association for Sexual Health and HIV)の第2回合同カンファランスで報告された。

TKレジメンの方がアドヒアランスが高くドロップアウトが少なかった。

生化学的な検査値異常や経過観察の受診の回数はTKレジメンの方が高かった。

 

しかしこれは多くの経過観察と検査によるモニタリングのためであると今回のデータを発表したRachel Sacks医師(St Mary's, Imperial College Healthcare NHS Trust )がコメントした。

TKとCKについて比較するためにthe St Mary's clinicにおいて2008年11月から2009年12月までに予防内服をおこなった256症例について経過を検討した。

114例がCKレジメンで行い、143例がTKレジメンで予防を行っていた。CKレジメングループは13例(11%)がTKに途中でスイッチしており、TKからのスイッチは9例(5%)であった。

TKレジメン群の方は28日間の予防を完遂した率が75%でCK群の68%より優れておりアドヒアランスがよいと思われたが統計学的有意差はみられなかった。

CKレジメン群で11%が副作用がみられて中止になっており、6%のTKレジメンより多かったがこれも有意差はなかった。

有意差のあった副作用はCK群での嘔気とTK群での低リン血症およびビリルビン値の上昇であった。

経過観察による受診の回数はTK群では平均3回で、CK群で平均2.7回であった。「TKによる予防は有意に嘔気やその他の自覚症状がすくないが、血液検査異常は高率でみられるようだ。」とDr. Sacksは報告した。

暴露後予防は性的あるいは職業上で、HIV暴露が明らかな場合、あるいは予想される場合に行われた。

今回の研究はImperial College Healthcare NHS Trustに資金提供をうけた。

[Presentation title: Comparing the Tolerability of Two HIV Post-Exposure Prophylaxis Regimens. Abstract O9]

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