10/10/01 配信分

メタ分析によると、アバカビルは心血管系有害事象に影響しない:AIDS 2010での報告

Meta-analysis Shows Abacavir Has No Effect on Cardiovascular Adverse Events: Presented at AIDS 2010

By Evelyn Harvey

VIENNA. July 21, 2010

抗HIV治療の効果的な治療薬のひとつであるアバカビルは、心血管系の有害事象と明白に関連しているといういくつかの観察研究と一つの無作為化比較試験(RCT)の結果を受け、議論にさらされてきた。しかし、他のいくつかのRCTと安全に収集されたデータは、これと矛盾する結果であった。2010年7月21日に開催された第18回国際AIDS会議で報告されたメタ分析では、29のRCTのデータを解析したところ、アバカビルと心血管系リスクには関連がなかったという結果を明らかにした。

「観察研究はバイアスがかかりやすく、交絡因子(2変数の関係をゆがめる因子)が存在する可能性に注意を払わなければならない」とイタリア、Padua大学のMario Cruciani医師が述べている。そのため、Cruciani医師らは文献の系統的レビューから同定した19の試験とアバカビルの生産者によって行われた10の未発表試験、合わせて29のRCTを選択した。アバカビルを含むレジメンと含まないレジメンが比較されていて、少なくとも24週以上アバカビルを使用している研究を選択した。

研究者らは、心筋梗塞、死亡、その他の治療中断を要する有害事象の比率について解析した。同様に、ウイルス量が48週と96週の時点で50 HIV RNA copies/ml以下、200以下、500以下の患者の割合について解析した。9,611人のデータが解析された。

ウイルス学的な結果は、1つの例外を除き、アバカビルと対照群はほぼ変わりなかった。ウイルス量が10万以上の群では、48週の時点でアバカビルの方がテノホビルより支持されていた。有害事象については、アバカビルの使用は、心筋梗塞(p=0.36)や総死亡率(p=0.17)を増加させないという結果であった。中断を要する有害事象の比率も、アバカビル群と対照群で差がなかった(p=0.19)。

著者らは、アバカビルが心血管系リスクと関連しているという今までの観察研究が、今回のメタ分析に含まれている研究より長期間にわたるものであることを認めている。しかし、これまでの研究では、6か月以内の短期間の使用でもアバカビルは心血管系リスクと関連するとされていた。また、研究者らは、腎疾患がHIV患者の心血管系リスクに関連する可能性があり、交絡因子として見逃すことはできないと指摘している。

[Presentation title: Abacavir Use and Cardiovascular Disease Events: A Meta-Analysis of Published and Unpublished Data. Abstract WEPE0121]

1日1回のダルナビル/リトナビル投与は安全で効果的である(AIDS2010での発表)

Once-Daily Darunavir/Ritonavir Is Safe and Effective in ARV-Experienced Subjects: Presented at AIDS 2010

ウィーン、2010年7月21日。ダルナビル/リトナビル(DRV/r:ブリジスタナイーブ)によるHIV感染の治療の研究から、1日1回投与は、脂質代謝の面において、一日2回投与のレジメンと比して、効果的で安全であると明らかになった。その上、内服アドヒアランスとしては非常に効果的である。

1日1回投与のDRV/rについての結果は、Treatment Experienced Patients(ODIN)で得られた。データは、7月21日、22日の、第18回国際AIDSカンファレンスのポスター発表で提示された。

Jose Arribas博士(La Paz病院HIV部門、マドレード、スペイン)とCassy Workman博士(AIDS Research Initiative、ダーリングハースト、オーストラリア)らは、DRV/r 800/100mg1日1回(いわゆるプリジスタナイーブの用法)での治療例(n=294)、DRV/r600/100mg1日2回(プリジスタの用法)での治療例(n=296)を48週間比較した。

全ての患者において、HIV-1 RNAのウイルス量は1000コピー/ml以下で、12週以上のHAARTを受けており、DRV耐性はなし。全ての参加者は、以前の治療に基づき、少なくとも2種類のNRTIを含む適切な治療を同時に受けている。

48週での効果を実証するODINでのデータは以前に発表されていた。1日1回投与ではウイルス量が50コピー/ml以下になったのは72.1%であったのに対し、1日2回投与では0.9%であり、非劣勢は証明されていた。両者とも認容性は十分で、中断率は5%未満であった。

DRVなどのプロテアーゼ阻害剤は脂質代謝異常を引き起こしやすい。脂質について、開始時と4、8、12、24、36、48週に測定された。必要がある際は、脂質を下げる薬剤を使用した。

全体として、脂質に関する副作用は1日2回投与では7.1%に認められたが、1日1回投与群でも頻度は同じであった(7.1%)。検査値を比較してみると、総コレステロール・中性脂肪については、1日1回投与群が明らかに低かった。(P=0.026とP=0.038)グレード2〜4の発生率も1日1回投与群の方が著名に低かった。たとえば、グレード2〜4のコレステロール値上昇は、1日1回投与では10.1%であったが、1日2回投与では20.6%であった(P<0.0007)。

ODINの調査員は、Modified-Medication Adherence Self-Report Inventory(M-MASRI)の質問票、DRV血漿中濃度(検出限度は10ng/ml)、錠剤の数のカウントにて、治療のアドヒアランスについても評価した(4週〜48週)。 この3つの方法はいずれの群でもアドヒアランスの幅がみられたが、1日1回群では57%〜83%、1日2回投与群では、54%〜88%であった、アドヒアランスが保たれている患者では、アドヒアランスが悪い患者と比し、ウイルス量の反応がよかった。たとえば、1日1回投与群では、166名のアドヒアランス良好者のうち、141人(84.9%)でウイルス量が50コピー以下であったが、アドヒアランスが不良の場合は、97患者中55人(56.7%)のみが50コピー以下であった。この研究における2群間においては、アドヒアランスについての大きな影響はなかった。

「アドヒアランスについての比較に使用された方法論にかかわらず、ウイルスの反応は両群において、良好群の方が不良群よりもよかった。」と発表者は結論付けた。

この研究の資金はTibotecにより提供された。

[Presentation titles: Effect of Adherence on Virological Response to Once-Daily (QD) Versus Twice-Daily (BID) Darunavir/Ritonavir (DRV/r) in Treatment-Experienced, HIV-1-Infected Patients With No DRV Resistance-Associated Mutations (RAMs): ODIN 48-Week Data. Abstract TUPE0184;Effects of Once-Daily (QD) Versus Twice-Daily (BID) Darunavir/Ritonavir (DRV/r) on Lipid Parameters at Week 48 in Treatment-Experienced, HIV-1-Infected Patients With No DRV Resistance-Associated Mutations (RAMs) in the ODIN study. Abstract WEPE0115]

JAMA. 2010 Jul 21;304(3):284-92.

Routine opt-out rapid HIV screening and detection of HIV infection in emergency department patients.

Haukoos JS, Hopkins E, Conroy AA, Silverman M, Byyny RL, Eisert S, Thrun MW, Wilson ML, Hutchinson AB, Forsyth J, Johnson SC, Heffelfinger JD; Denver Emergency Department HIV Opt-Out Study Group.

Abstract

背景: CDCでは罹患率が0.1%より高い地域においては救急領域を含めて医療現場においてルーチンの同意取得なしでの(opt-out)HIV検査を推奨している。この点に関して救急領域での有用性は検討されていない。

目的: opt-outでの迅速HIV検査が救急領域において新規の患者発見に与える影響について医師が疑って提出する迅速HIV検査と比較する。

研究方法および対象: 国政調査によって55000人が来院すると推定される都市部の医療施設においてQuasi-experimental equivalent time-samples designによる調査を行う。対象は16歳以上でHIV迅速検査の同意を得た患者介入方法: 2007年4月15日から2009年4月15日の間で、対象を選ばずopt-outで迅速検査と医師が直接診断のために行うHIV迅速検査を 4ヶ月ごとに交代で施行した。

評価項目: 新規のHIV感染者の診断数と対象を絞らない場合と絞った場合との関係

結果: opt-out フェーズで28,043人の来院者に対して6933 (25%)例でHIV検査が行われた。 (6702 例はopt-outによるスクリーニングで231例は診断目的であった。) opt-out検査を施行された 6702例中10例がHIVと診断され (0.15%; 95% CI, 0.07%-0.27%)、診断のために選ばれたHIV検査をうけた231例中5例が新規に診断された(2.2%; 95% CI, 0.7%-5.0%)。diagnostic フェーズにおいては29,925例が来院し243 (0.8%)例で検査が行われた。このときは 4例 (1.6%; 95% CI, 0.5%-4.2%) が新たにHIV感染が判明した。

新規HIV診断率はopt-out フェーズで診断的検査も含めて28,043例中の15例(0.05%; 95% CI, 0.03%-0.09%)で、診断フェーズで29,925例中の4例 (0.01%; 95% CI, 0.004%-0.03%)ということであった。患者の居住地、保険加入状況、診断的HIV検査が行われていたかどうかを調整した場合にopt-out HIVスクリーニング検査は新規HIV診断に独立した関連因子であった。 (risk ratio, 3.6; 95% CI, 1.2-10.8)

試験期間に新規診断された患者のCD4数はopt-outフェーズにおいて69/μL(IQR, 17-430)で診断検査フェーズでは13/μL (IQR, 11-15) であった。(P = .02).

結論: 対象を絞らずにopt-outで行う迅速HIV検査と診断のために検査を行う場合では診断される患者数がやや増加するが診断される病期についてはいずれも進行期であった。

PMID: 20639562 [PubMed - indexed for MEDLINE]

アフリカの4カ国におけるHIV母子感染予防のためのネビラピンを含む予防投与のカバー範囲

JAMA. 2010 Jul 21;304(3):293-302.

Coverage of nevirapine-based services to prevent mother-to-child HIV transmission in 4 African countries.

抄録

背景:HIV母子感染予防のカバー範囲を客観的に評価した研究はほとんどない。

目的:アフリカの4カ国において、HIV母子感染の予防投与がどの程度行われているか調査する。

対象と方法:カメルーン、コートジボアール、南アフリカ、ザンビアのランダムに選択された43の分娩を行う施設において、2007/6/10〜2008/10/30に採取された臍帯血検体を用いて多施設調査研究を行った。HIV母子感染を予防するために、すべての施設で少なくともネビラピン単剤投与を行い、いくつかの施設ではネビラピンに加え他の予防薬の投与を行った。

主な評価項目:ネビラピン投与が行われた人数。HIVに暴露された乳児の割合(臍帯血クロマトグラフィーで確認された母親のネビラピン投与の有無と直接観察で確認された乳児のネビラピン投与の有無)。

結果:全部で27,893の臍帯血検体が調査され、そのうちHIV陽性は3324(12%)であった。ネビラピン投与の有無を確認できたのは、HIV陽性の症例のうち3196件であった。ネビラピン投与のカバー範囲は、施設により大きなばらつきがあった(0%〜82%)。国による調整を行うと、全体でのカバー範囲は51%(95%信頼区間[CI], 49%-53%)であった。多変量解析では、ネビラピンによる予防投与に失敗した例は、30歳以上で出産した例に比べ、20歳以下で出産した例(補正オッズ比[AOR], 1.44; 95% CI, 1.18-1.76)と20-25歳で出産した例(AOR, 1.28; 95% CI, 1.07-1.54)で有意に多かった。また、出産前の健診受診回数が6回以上の例に比べ、0-1回の例(AOR, 2.91; 95% CI, 2.40-3.54)、2-3回の例(AOR, 1.93; 95% CI, 1.60-2.33)、4-5回の例(AOR, 1.56; 95% CI, 1.34-1.80)で有意に多かった。また、出生体重が3500g以上の例に比べ、2500g以下の例(AOR, 1.34; 95% CI, 1.11-1.62)で有意に多かった。

結論:このランダムに選ばれた施設におけるHIV予防投与の状況を調査する研究では、HIVに暴露された乳児のうち、51%しかネビラピン予防投与を受けていなかった。

がん専門医はオプト・アウトHIV検査をルーチンに行うべきか

JAMA. 2010 Jul 21;304(3):334-9.

Time for oncologists to opt in for routine opt-out HIV testing?

Chiao EY, Dezube BJ, Krown SE, Wachsman W, Brock MV, Giordano TP, Mitsuyasu R, Pantanowitz L.

Department of Medicine, Baylor College of Medicine, and Health Services Research and Development, Department of Veterans Affairs Medical Center, Houston, Texas 77030, USA.

HIV感染者は、悪性疾患に罹患するリスクが高いが、悪性疾患に罹患した患者におけるHIV検査は標準的とはいえない。2006年、CDC(疾患予防管理センター)はHIV検査をすべての医療の現場で推奨し、”非標的オプト・アウト(事前に患者の許可を得ない)HIVスクリーニング検査”を提唱した。

さまざまな理由から、米国では日常的なオプト・アウトHIV検査は依然として広く使われていない。オプト・アウトHIV検査に対する多くの障壁は明らかとなっているが、この検査は、たとえば妊婦のような特定の層を対象に行われている。また、救急の場面で試されているが、ほかの場面ではあまり重視されていない。

この論文では、オプト・アウトHIV検査をがん患者に対してルーチンに行うための背景、論拠、エビデンスを提示した。さらに、HIVが陽性と判明した場合、がん治療の間の適切なHIVマネージメントによって、臨床上の予後を改善するための、オプト・アウトHIV検査の潜在力について、エビデンスを議論した。

PEPFAR治療プログラムにおけるジェネリックの抗ウイルス薬使用とコスト削減

JAMA. 2010 Jul 21;304(3):313-20.

Use of generic antiretroviral agents and cost savings in PEPFAR treatment programs.

抄録

状況:開発途上国で抗ウイルス治療を迅速に広げていくための最も大きな障害のひとつに、抗ウイルス薬の価格の問題がある。FDAの方法を修正してジェネリックの抗ウイルス薬を承認することで、PEPFARプログラムでのジェネリック薬の使用が可能になっている。

*PEPFAR=US President’s Emergency Plan for AIDS Relief(アメリカ大統領のAIDS救済緊急計画)

目的:ガイアナ、ハイチ、ベトナムと13のアフリカの国々における、ジェネリックの抗ウイルス薬の使用状況と、経時的な抗ウイルス薬使用量とコストの変化を評価する。

方法(計画・設定・参加者):2005年から2008年に、16の国において、PEPFAR実行組織と調達機関より購入された抗ウイルス薬の購入状況を年一回調査する。

主な評価項目:薬剤の購入金額、抗ウイルス薬の種類と量(パック数、1月あたりの供給量)、ジェネリック薬の割合、ジェネリック薬使用によるコスト削減状況。

結果:薬剤の購入金額は、$11億6800万(2005)から$20億2200万(2008)に増加した。1月あたりのジェネリック薬の使用量は、6200万パックから2億2100万パックに増加した。薬剤購入金額におけるジェネリック薬の割合は、2005年には9.17%(95% confidence interval [CI]=95%信頼区間, 9.17%-9.18%)、2008年には76.41%(95% CI, 76.41%-76.42%)であった(p<0.001)。ジェネリック薬の使用量の割合は、14.8%(95% CI, 14.79%-14.84%)から89.33%(95% CI, 89.32%-89.34%)に増加した(p<0.001)。2008年には、8つのPEPFARプログラムで使用量の90%以上がジェネリック薬となっている。南アフリカではジェネリック薬の使用量が最も少なかった(24.7%; 95% CI, 24.6%-24.8%)。ジェネリックの合剤の使用割合は、2005年には33.3%(95% CI, 33.24%-33.43%)、2008年には42.73%(95% CI, 42.71%-42.75%)と増加していた。ジェネリック薬使用によるコストの削減は、2005年$8,108,444、2006年$24,940,014、2007年$75,645,816、2008年$214,648,982であり、トータルで$323,343,256が削減された。

結論:16の国でのPEPFARプログラムにおいて、ジェネリックの抗ウイルス薬の使用により、抗ウイルス薬使用量全体の増加とコスト削減という効果が表れている。

成人HIV感染症の治療:国際エイズ学会米国委員会による2010年版ガイドライン

Antiretroviral treatment of adult HIV infection: 2010 recommendations of the International AIDS Society-USA panel.

背景:

未治療のHIV感染症が未治療であった場合の転帰や、未治療あるいは既治療患者に対する治療法の拡大に関する最近のデータに基づき、国際エイズ学会米国委員会による「成人HIV感染者に対する抗ウイルス治療ガイドライン」が制定された。

目的:

先進国で入手可能な抗ウイルス治療と検査ツールを用いたうえで、成人のHIV感染者に対する治療法について、アップデートされた指針を示すことを目的とする。このの報告では、いつ初回治療を開始すべきか、初回治療のレジメン、患者のモニタリング、治療内容を変更すべきタイミング、その際にどのような薬剤を使うか、に関する指針を述べてある。

情報源と選択:

HIV研究と臨床に関する専門知識を持った委員が、前回の委員会から2010年4月までの期間に、出版されたか特定の学術集会で発表されたデータを総括した。

データの抽出と統合

新たなエビデンスは委員会で検討された。推奨はセクションごとの下書きを経て、委員会全体で検討、編集された。エビデンスの質と強さは点数化され、委員会全体の合意により推奨を決定した。

結論:

治療を控えた患者は、抗ウイルス薬が開始されるまでに確認されるべきである。治療が推奨されるのは、無症状でCD4細胞数が500個/mL以下の患者、症状があるすべての患者、特定の状態/合併症を持つ患者である。CD4細胞数が500個/mLより多い無症状の患者においても、治療の開始が考慮される。初回あるいは二回目以降のレジメンは、その時点での状況に応じて症例毎に考慮されなくてはならない。抗レトロウイルス療法を受けた患者を定期的に監視する;治療失敗に対しては早期発見と対応が重要であり、HIV-1 RNA量が商業的に使用可能な検査で検出できない程度に抑制されることが、治療のゴールとなる。

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