15/09/29 up
BACKGROUND
プラセボをコントロール群としたRCTによりTDFの暴露前予防(PrEP)がHIV感染リスクを低下させることが報告されたが、この感染予防効果がPreP施行者のリスク行動に対しても効果があることを確認するために今回の PROUD studyをおこなった。
METHODS
PROUDはオープンラベル無作為割り付け試験で、イギリスの13のクリニックでおこなわれた。過去90日以内にコンドームなしの肛門性交をおこなったHIV未感染のゲイならびにMSMを登録した。
そして連日ないし暴露後出来るだけ迅速にTDF(245mg)/FTC(200mg)の合剤を内服する群と登録後1年後に内服する(遅延内服)群に1:1に振り分けて経過を観察した。
ウェブ経由によりコンピュータで可変的な標本リストを作成してクリニックのサイトで層別化しランダム化した。経過観察は年4回の頻度でおこなった。
パイロット研究としての今回の主たる観察項目は500例に到達するまでの時間で、副次項目は観察期間でのHIV感染の数、安全性、内服アドヒアランス、そして両群の比較とした。試験はISRCTN (number ISRCTN94465371)およびClinicalTrials.gov (NCT02065986).に登録しておこなわれた。
FINDINGS
今回544例(275例は迅速内服、269例は時間をおいて内服する群)を2012年11月29日から2014年4月30日の間に登録した。
効果についてのエビデンスに基づいて、時間をおいて内服する群の患者に対してPrePを推奨することと変更することで2014年10月30日に承認された。
HIVの感染の有無についての観察は243/259症例-年(94%)が迅速内服群でおこなわれ、222/245症例-年(90%)が遅延内服群でおこなわれた。
実際のHIV感染は迅速内服群で3例(1.2/100 人-年)、遅延内服群で20例(9.0/100 人-年)であったが、遅延内服群の174事例は暴露後の予防となっていた。これにより相対的なリスクの低減は86%(90%CI 64-96, p=0·0001)であった、絶対差は7·8/100人-年(90% CI 4·3-11·3)であった。
同じリスク集団において13人(90% CI 9-23)が1回のHIV感染の予防のために1年のPrePを必要とすると計算された。
今回28の有害事象がみられたが重篤な有害事象は報告されなかった。もっともよくみられたものは嘔気、頭痛、関節痛でこれらによってPrePが妨げられた。PreP施行者においてリスクが高いと思われたが、性行為感染症については直腸淋菌感染症および直腸クラミジアも含めて両群で違いは見られなかった。
INTERPRETATION
リスクの高いグループの間で、毎日のTDF/FTCの内服は以前のプラセボ対照試験よりHIV感染に対して高い効果が得られた。そして、プラセボ対象試験で見られた感染率より今回のより実生活に近い試験のセッティングでは効果が少ないのではないかという懸念を否定した。他の性行為感染症の増加はみられませんでした。
今回の結果は、HIV感染のリスクの高いMSMのために、感染防止の標準としてPrEPを行うことを強く支持する。 FUNDING MRC Clinical Trials Unit at UCL, Public Health England, and Gilead Sciences.
BACKGROUND
ヒトパピローマウイルス(HPV)は皮膚粘膜感染症の原因ウイルスでもあり、また長期間の感染により扁平上皮癌を引き起こすとされている。HPV16に代表される発がん性の高いHPVは、子宮頚部上皮内腫瘍と肛門上皮内腫瘍(AIN)の約90%で検出される。HIV感染は、慢性HPVの罹患率と相関しており、またAINの発生率、肛門がん(AC)のリスク増加と関連している。2013年9月、HIV感染者でのAIN予防、スクリーニング、治療に関するガイドラインがドイツAIDS学会より発表された。
OBJECTIVE
ガイドラインで推奨されているスクリーニングの過程を検証するために、定期的に当院に外来通院しているHIV患者で、123名の男女を対象に解析を行った。
METHODS
肛門細胞診、HPVタイピング、高解像度肛門鏡検査(HRA)を行った。
RESULTS
今回の検証では、肛門細胞診スクリーニングのみで、悪性度の高いAIN(AIN3)の患者を同定できたのは少数であった。
細胞診正常(NILM, cytology graded negative for intraepithelial lesion or malignancy )の患者(n=5)で29%、意議不明な異型扁平上皮細胞(atypical squamous cells of undetermined significance:ASCUS)の患者(n = 5)で71.4%、軽度扁平上皮内細胞(low grade squamous intraepithelial lesion:LSIL)の患者( n = 8)で 44.5%において、組織診で悪性度が高く(AIN2または3)、これは予想以上の結果であった。さらに高度扁平上皮内病変(high-grade squamous intraepithelial lesion:HSIL)では、ハイリスクの発がん性の高いHPVが検出され、その関連が示唆された。
CONCLUSION
肛門細胞診のみでは、肛門癌のスクリーニングとしては、大多数の患者において肛門異形上皮を検出する上では不十分であった。 さらに、HPVタイピングや、今後臨床応用が期待される(新しい)バイオマーカーによって、肛門がん発症する可能性の高い患者をスクリーニングし、肛門がん発症をモニターする意味での高解像度肛門鏡検査の適応の有無を判断することが期待される。
BACKGROUND
RALとTDF/FTCの組み合わせは、ガイドラインの第一推奨である。HIV感染の診断を受け、抗HIV薬を開始されるアメリカ人のある一定の数の患者がアフリカ系黒人である。しかし、このレジメンにおける代謝関連マーカーについての大規模研究は白人でおこなわれていた。
METHODS
無治療のHIV感染アフリカ系黒人を対象としてオープンラベルでRAL+TDF/FTC単一群割り付けし104週にわたる観察研究である。
空腹時の脂質、インスリン抵抗性、内臓脂肪(VAT)、腹部の皮下脂肪組織、四肢、体幹の脂肪、骨密度を治療開始後56週および104週で検討した。
RESULTS
30例(85%が男性)の登録患者のそれぞれの中央値は年齢38歳、CD4数は323/mm(3)、HIV RNA29,245copy/ml、そしてBMIは28.1 kg/m(2)であった。
56週および104週目でVAT、体幹、四肢すべての脂肪がは有意に上昇した。BMIは104週目において1.5%低下した。非HDLコレステロール、空腹時の中性脂肪、インスリン抵抗性に有意な変化はなかった。
CD4数の中央値は318/mm(3) (IQR 179, 403; full range 40, 749) (P < 0.001)であった。
78%(56週)および70%(104週)がHIV RNAレベルが<40copy/mlに到達した。(観察脱落症例も治療失敗としている。)治療薬関連で継続不能症例はなく、新たな耐性発現もみられなかった。
CONCLUSIONS
今回のアフリカ系黒人を対象としたコホート研究によりRAL+TDF/FTCは全体的な体脂肪の有意な増加がみられた。
一方で血清脂質やインスリン抵抗性は見られず、BMDは軽度低下した。治療の忍容性はよく効果も十分であった。
これらの結果は人種の異なる集団での初回治療に対する研究結果と同様で、アフリカ系黒人のHIV患者の治療開始時の薬剤選択に対する情報を与えた。
OBJECTIVES
腎疾患と全身炎症はHIV感染患者において、非エイズ関連疾患と最終的な死亡率の予測因子となる。そこで腎機能と全身性炎症マーカーとの関連について検討した。
METHODS
AIDS Clinical Trials Group Study A5224sのデータより2次分析を行った。
腎機能マーカーは尿中蛋白・クレアチニン比(uPCR)、尿中アルブミン・クレアチニン比(uACR)、CKD-EPI式クレアチニンで計算したeGFR(推算糸球体濾過量)、CKD-EPI式システインCクレアチニンで計算したeGFRを用いた。全身炎症マーカーとしては高感度CRP(hsCRP)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子(TNFα)、可溶性TNFαレセプターⅠ(sTNFRI)、sTNFRⅡ、soluble vascular cellular adhesion molecules (sVCAM-1)、soluble intercellular adhesion molecules (sICAM-1)を用い、ART開始前と、ART導入後96週でそれらの相関性について調べた。
RESULTS
システインCクレアチニンを用いたeGFR、uPCR、uACRは、ART開始前のほとんどの全身炎症性マーカーと相関していた。uPCRとシステインCクレアチニンを用いたeGFRはART開始後96週の時点でも炎症性マーカーと相関性があったが、uACRは相関性が認められなかった。これらの相関性は統計学的に有意ではあったが、そのほとんどがrho values <0.50であった。CKD-EPIクレアチニンを用いたeGFRは、システインCを持ちいたeGFRと比較して全身炎症性マーカーとの相関性は低かったが、ART開始時のsTNFR1と、ART96週時点でのsTNFRⅠとⅡに相関していた。
CONCLUSIONS
HIV感染患者では、腎疾患と腎機能はART前、ART後どちらも全身性炎症マーカーと関連があった。全身炎症反応は、部分的だが蛋白尿、アルブミン尿、腎機能低下と今後の有害事象の発生との関連を説明できるのではないか。
cystatin C-creatinine:血清シスタチンC値は食事や炎症、年齢、性差、筋肉量などの影響を受けないため、小児・老人・妊産婦などでも測定可能。クレアチニンより良い腎機能マーカーと著者らは言っている。
ACTG A5224s:A5202と呼ばれるHIV感染未治療の患者の代謝に関するスタディで、4つに一日1回レジメンを割り当てて追跡する研究
PURPOSE
集学的ながん治療をうける施設の癌患者におけるHIV検査率および陽性率を検証する。
METHODS
後ろ向きコホート研究として総合ガンセンターで2004年1月~2011年4月までの間で登録されガン治療を受けた成人癌患者を対象とした。がん治療開始時のHIV1/2、ウェスタン法の両方あるいはどちらかの陽性率を決定した。多重ロジスティック解析でHIV検査陽性の予測因子について検討した。
RESULTS
18,874例の登録患者の内で3,514例(18.6%)がHIV検査を受けていた。
HIV陽性率は1.2%(41/3,514)であり、新規の陽性診断は0.3%(12/3,514)であった。
検査の施行率は黒人で少なく、白人で多かった(13.7% v 19.2%)が、陽性率では黒人の方が他の人種より高かった(4.5%)。
AIDS関連腫瘍(非ホジキン性悪性リンパ腫、子宮頸がんなど)発症者でみると、非ホジキンリンパ腫の既往や若年発症者、そして2006年以降の登録者において、HIV陽性の予測因子であった。非AIDS関連腫瘍についてみるとHIV陽性の予測因子としては若年発症と2006年以降の登録者ならびに男性、不正薬物使用歴、性行為感染症の既往、血液悪性腫瘍、そして黒人であった。
CONCLUSION
HIV感染率は癌患者全体の1.2%で国内ガイドラインで示されたOPT-OUT検査での数字より0.1%高かった。しかし、HIV検査施行率自体は低かった。
HIV感染と抗レトロウイルス療法は、それぞれ心血管系疾患のリスクファクターである。 ART前の時代、HIV感染患者は、日和見感染の罹患率と死亡率が増加していた。一方ART後の時代、HIV感染患者は、急性冠症候群や冠動脈疾患、不整脈や心筋症などの慢性疾患のリスクが増加している。その心血管系疾患の初発症状は、衰弱や息切れ、倦怠感など、心疾患として典型的な症状ではない。この論文ではHIV感染患者の心疾患について、臨床症状や精密検査、マネージメントや治療について概説する。