16/10/12 up

多剤併用ART開始後のHIV陽性患者の平均余命:メタ解析

Life expectancy of HIV-positive people after starting combination antiretroviral therapy: a meta-analysis;

Teeraananchai S, Kerr S, Amin J, Ruxrungtham K, Law M;

HIV Medicine (Aug 2016)

OBJECTIVES

平均余命はHIV感染者に関連した方針決定のために重要な指標である。多剤併用ART( cART )開始後の平均余命を概算する調査では 所得地域によって異なることが分かっている。我々の調査の目的はcART開始後のHIV陽性患者の平均余命を評価し、低・中、高所得国による違いを測定するためにメタ解析を行うことである。

METHODS

14歳以上のcARTを開始されたHIV感染者の平均余命を算出する簡易生命表を用いた8つのコホート研究が行われた。すべての予後と所得地域による予後を算出するためにランダム効果メタ解析が使用された。調査間の不均質性はI²統計で評価した。我々はcART開始後の平均余命を20歳と35歳で算出した。

RESULTS

高所得国における全平均余命は20歳と35歳でそれぞれ43.3年[95% 信頼区間(CI) 42.5-44.2 年]、32.2年(95% CI 30.9-33.5年)、低・中所得国で28.3年 (95% CI 23.3-33.3年) 、25.6年 (95% CI 22.1-29.2年)であった。低・中所得国では20歳時でcARTを開始された平均余命は男性で22.9年(95% CI 18.4-27.5 年)、女性で33.0年(95% CI 30.4-35.6 年)であったが、高所得国では2つの性別で同等であった。すべての所得国でcART開始後の平均余命は暦時間を越えて増加していた。

CONCLUSIONS

われわれの結果はcART開始後のHIV陽性者の平均余命は年を経るごとに改善することを示唆した。cARTガイドラインの患者の長期予後に対する影響がどのように変化するかを評価するために未来の平均余命モニタリングは重要である。

HIV Infection and Survival Among Women With Cervical Cancer;

Dryden-Peterson S, Bvochora-Nsingo M, Suneja G, Efstathiou J, Grover S, Chiyapo S, Ramogola-Masire D, Kebabonye-Pusoentsi M, Clayman R, Mapes A, Tapela N, Asmelash A, Medhin H, Viswanathan A, Russell A, Lin L, Kayembe M, Mmalane M, Randall T, Chabner B, Lockman S;

Journal of Clinical Oncology (JCO) (Aug 2016)

PURPOSE

子宮頚癌は世界中のHIV感染女性2千万人の中で癌の死因の最多をしめるものです。今回我々は、HIV感染が子宮頚癌の死亡に影響を与えるのか検討することを考えた。

PATIENTS AND METHODS

2010年から2015年の間のボツワナでの子宮頚癌患者を登録した。標準治療としてシスプラチンとの同時併用での外照射と内照射の組み合わせとした。HIVと生存に対する相関はinverse probability weighted marginal Cox modelにより計算した。

RESULTS

348例の子宮頚癌患者がエントリーされそのうち231例(66.4%)がHIV感染者で96例(27.6%)がHIV非感染であった。189例(81.8%)は癌の診断前にARTを受けていた。

CD4陽性細胞数の中央値は397(IQR 264-555)。

観察期間の中央値は19.7ヶ月で117例(50.7%)のHIV合併患者と40例(41.7%)のHVI非感染患者が死亡した。1例はHIV感染と残存癌の影響で死亡したと判定されました。3年生存率はHIV感染者では35%(95% CI, 27% to 44%)で、HIV非感染では48% (95% CI, 35% to 60%)であった。

この結果より統計的に有意にHIV感染はすべての女性の子宮頸癌の死亡のリスク因子であると言えた。 (hazard ratio, 1.95; 95% CI, 1.20 to 3.17) そしてさらにガイドラインに準拠した治療が行われた患者においても有意であった。(hazard ratio, 2.63; 95% CI, 1.05 to 6.55)

HIV患者の生存における有害事象はより癌のステージが早期の限局型、根治を目指す治療が行われる群((P = .003)、さらによりCD4数が低下している群で有意に有害事象の発生が高かった。

CONCLUSION

ボツワナにおいて医療機関へのアクセスが良く、ARTを受けていても、HIV感染は有意に子宮頸癌の生存率を低下させる。

第2期梅毒と関連した免疫再構築症候群

Immune reconstitution inflammatory syndrome associated with secondary syphilis;

Frunza-Stefan S, Acharya G, Kazlouskaya V, Vukasinov P, Chiou Y, Thet Z;

International Journal of STD & AIDS (Aug 2016)

免疫再構築症候群(IRIS)はARTの開始や強力なARTレジメンへの変更の際にHIV感染患者に起こる逆説的な日和見感染症の悪化または新規発症と関連した状態である。多くの日和見感染症(OIs)と関連したIRISがよく報告されているが、梅毒はこの観点からの報告は極めてまれである。

6週間前にAIDSと診断された52歳の男性患者に播種性非搔痒性無痛性皮疹がみられた。彼は発熱、咳、息切れ、関節痛・腫脹などはないといった。患者は性器潰瘍のような症状はなく、ほかの内科的疾患の既往もなかった。

CD4細胞数とウイルス力価はそれぞれ40 cells/mm3、280,000 copies/mlであった。一方 RPR、QFT、クリプトコッカス抗原、トキソプラズマテストなどのOIsのスクリーニングテストはHIV診断時陰性であった。

ART開始3日後上記の皮疹が出現した。この時点でも再検したRPRテストは陰性だった。皮膚のパンチ生検では免疫染色によって確認され第2期梅毒が疑われた。さらに再検したRPRテスト、CD4細胞数、ウイルス力価はそれぞれ1:256, 257 cells/mm3, 5000 copies/mlだった。

患者の皮疹は徐々に消褪した。ARTを中止することなくRPR抗体価はベンザシンペニシリンで低下傾向となった。

IRISの存在はすべてのHIVまたはOIsへの治療反応を予測するものではない。IRISに関連したリスクに勝るHIV感染治療への有効性があるため、ARTの中止は一般的には推奨されない。

Weekends-off efavirenz-based antiretroviral therapy in HIV-infected children, adolescents, and young adults(BREATHER): a randomised, open-label, non-inferiority, phase2/3 trial;

BREATHER (PENTA 16) Trial Group;

Lancet HIV 3 (9), e421-30 (Sep 2016)

BACKGROUND

若年者のHIV-1の治療は生涯続くため、血中半減期の長い薬剤による短期間のサイクル治療を行うことで週末が休薬でき、毒性を軽減しQOLを改善させることが可能となる。今回は短期間サイクル療法(5日間内服し、2日間休薬する)と継続治療の比較を行った。

METHODS

オープンラベルの非劣性確認試験として対象を8歳から24歳で初回治療としてEFVと2種のNRTIを含むレジメンによって12ヶ月以上50コピー以下で安定している症例とした。

症例は各年齢層別に準備されたコンピュータ上のリストによって継続治療群とサイクル治療群に無作為化され1対1に割り付けた。

コンピュータのリストは統計学者が作成し年齢アフリカ系黒人とそれ以外の割合いが均等となるように調整し、ウェブ上にアクセスできる臨床医があるいは3カ所の許可された臨床試験ユニットで登録した。

主たる検討項目は48週時点までの50コピー以下の継続率をKaplan-Meier法によって比較することである。非劣性マージンを12%とした。検討はITTで行った。

今回の試験はEudraCT(登録番号は2009-012947-40)およびでISRCTN(登録番号97755073)CTA(登録番号 27505/0005/001-0001)それぞれに登録した。

FINDINGS

2011年4月1日から2013年6月28日まで世界11カ国で199例の登録があり、99例を短期サイクル治療群、 100例を継続治療群群に割り付け、最終登録患者が4週を経過するまで継続した。

105例(53%)が男性で年齢の中央値は14歳(IQR 12-18)でCD4 陽性細胞の中央値は735 個/μL (IQR 576-968)であった。

短期サイクル治療群6例(6%)と継続治療群7例(7%)でウイルス量が50コピー以上となった 。両群の差は-1·2%, 90% CI -7·3 to 4·9となり 非劣性が証明できた。

短期サイクル治療群の13例でグレード3あるいは4の有害事象がみられ、継続治療群ではそれが14例で 有意差はなかった(p=0·89)。

その他のART関連有害事象としては短期サイクル治療群で女性化乳房が1例と妊娠中絶が1例で継続治療群では14例(リポジストロフィー5例、女性化乳房が2例、自殺念慮、めまい、頭痛、失神、妊娠中絶、好中球減少がそれぞれ1例ずつ、トランスアミナーゼ上昇が2例)でみられ有意差がみられた(p=0·02)。

INTERPRETATION

若年者における維持療法としての短期サイクル治療は継続治療と比較して48週時点では有効性において非劣性が証明され耐性化率も同様で安全性は有意に改善した。

今回の短期サイクル治療はEFVベースのARTを行っていて安定している若年者には考慮されるべき治療戦略の一つである。

FUNDING

下記の組織による研究費により施行

  

National Institute for Health Research Health Technology Assessment

UK Medical Research Council

European Commission

PENTA Foundation

INSERM SC10-US19

AIDS Res Hum Retroviruses Association of T Cell and Macrophage Activation with Arterial Vascular Health in HIV;

Grome H, Barnett L, Hagar C, Harrison D, Kalams S, Koethe J;

AIDS Research and Human Retroviruses (Aug 2016)

HIV感染症患者は心血管疾患のリスクが高くなるが、血管機能は間欠的な自然免疫、細胞性免疫の炎症活性化の影響についてはあまり知られていない。

EFV,TDF,FTCを2年以上内服しウイルス学的抑制が得られ心血管疾患の既往ない70名のHIV感染者で免疫状態と血管関連パラメーターの相関を計測した。

上腕動脈の血流依存性血管拡張反応(FMD)、血中のICAM-1、VCAM-1の値を計測した。さらにnaïve (CD45RO-CCR7+CD27+), activated (CD38+ and CD38+DR+), exhausted (PD1+), senescent (CD57+), and memory (CD45RO+) CD4+ and CD8+ といったT cellサブセットをフローサイトメモリーで、マクロファージの活性化マーカーをELISAとその他の免疫測定法を用いて測定した。

回帰分析を年齢、性別、喫煙、ARTの継続期間、BMIで調整した。

年齢中央値は45歳(IQR 39, 50)でCD4+細胞数は701 cells/µl (IQR 540, 954)、性別は43%が女性であった。

FMDは活性化CD8細胞数が多いことに相関 (p<0.01)していたがマクロファージの活性化には関与していなかった。

一方でICAM-1と VCAM-1の高値はsCD163 (p<=0.01 ), macrophage inflammatory protein-1α (p<=0.02), sCD14 (ICAM-1 のみp=0.01)であった。

これらの結果からはCD8+ T 細胞の活性化はマクロファージの活性化を介して血管内皮の弛緩性を損なう可能性がある。

ART施行中のHIV-1感染者はことなるメカニズムにより自然免疫および細胞性免疫両者の活性化によって血管疾患の発症が見られる可能性が示唆される。

脂質状態とApoE4遺伝子がART施行中のHIV感染男性において中年期の認知力低下に影響を与える

Lipid Profiles and APOE4 Allele Impact Midlife Cognitive Decline in HIV-Infected Men on Antiretroviral Therapy; Mukerji S, Locascio J, Misra V, Lorenz D, Holman A, Dutta A,Penugonda S, Wolinsky S, Gabuzda D;

Clinical Infectious Diseases (Jul 2016)

BACKGROUND

脂質異常とApolipoprotein E4 (APOE ϵ4) 遺伝子は年齢に関連した認知力低下の危険因子である。しかしどのようにこれらのリスクがHIV感染によって修飾されるのかは明らかでない。

METHODS

the Multicenter AIDS Cohort Studyデータを利用した長期的なnested study で、ベースラインのHIV RNA<400 copies/ml、経過観察中95%以上の受診があったARTを継続されている50歳から65歳までのHIV-1感染男性273人が、 516人のHIV陰性コントロールと社会人口動態学的変数についてマッチングされた。脂質マーカー(総コレステロール、LDL、HDL、中性脂肪)とApoE遺伝子型、HIV感染における認知力低下との関連が変量効果モデルを使用して調査された。

RESULTS

ベースラインでの被験者の年齢中間値は51歳、81%が白人、89%が12年以上の教育を受けていた。

HIV感染男性はコントロール群と比較し、総コレステロールとLDLは同程度であったが、HDLはより低く、TGはより高かった(P<0.001)。

HIV感染男性においてコレステロールとLDLが高いことは、認知力低下がより速い速度でみられることと関連していた(P<0.01)。

一方HDLがより高いことはHIV感染男性において認知力低下がより弱まっていた(P=0.02)。

コレステロールの上昇したHIV感染男性においてスタチンの使用は認知力低下がよりゆっくりになることと関連していた(P=0.02)。

APOE ϵ4 遺伝子型はHIV感染男性の認知力低下を加速していたが、HIV陰性男性ではそうではなく(P=0.01)、HIV陰性のϵ4 キャリアとは50歳以降の認知力低下の程度が異なっていた。コレステロール値はϵ4 遺伝子型と認知力低下のつながりを修飾しなかった。

CONCLUSIONS

コレステロールの上昇とAPOE ϵ4遺伝子型はARTを行われている50歳以上のHIV感染男性において認知力低下の独立した危険因子である。

脂質異常の治療は年齢の高いHIV感染者において認知力低下を減少させるのに効果のある戦略である。